東洋文庫に行ってきた

 文京散歩の途中に、本駒込あたりで東洋文庫に出くわす。出くわすというのも、このあたりは何度も通った記憶があるのだが、東洋文庫がこんなに立派なビルになっているのを知らなかったのだ。

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 東洋文庫は、日本の近代産業資本主義の遺産だ。三菱財閥三代目統帥・岩崎久彌の社会貢献事業の一つともいえる。

 ミュージアムで「北方アジア探検史」の展示が行われているというので興味が惹かれた。「探検」物語には根っから弱い性分なので……。

 江戸時代末期のアイヌ語辞書など貴重な資料が展示されている。保存状態がきわめて良くて、北方民族の民俗が今もなお鮮やかな色彩で残されているのには驚いた。

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19世紀のアイヌ語辞書


 この特別展と直接の関係はないが、ミュージアムの目玉である、モリソン書庫の偉容には度肝を抜かれた。天井近くまでうずたかく、かつ整然と積まれた万巻の書物は、人間の<知>への飽くなき探求、ある意味グロテスクなまでの欲望を物語る。

 その荘厳な展示の手法は、ひねくれて言えば、<知>を見せびらかすようでもある。しかし、見せびらかされる書物の万華鏡に触れることで、人はいろいろな刺激を得るものだ。

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モリソン書庫

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G.E.モリソンは1862年生まれのオーストラリアの旅行家、ジャーナリスト。中国滞在20年の間に極東に関する膨大な欧文文献を収集し、それを後に岩崎久彌が買い取った。このコレクションが東洋文庫の礎になった。

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 ミュージアムの裏手には回廊があり、その奥にはカフェ・レストランもある。

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 回廊の途中には知識や書物への賛美を述べる、さまざまな民族の言葉がレリーフとして記されている。上の写真は中国の少数民族イ族の言葉。「人は知識を求めるも、豹虎は獲物を狩るのみ」というのが現代日本語訳。かつて雲南省でイ族の人々に会ったことがあるが、彼らが漢字とは異なる独特の文字を持っていたことは、恥ずかしながらここで初めて知った。